当記事にはプロモーションが含まれています。

故人が兄弟(姉妹)・物静かな性格・芸術が趣味だった場合の喪主挨拶の例文です。

喪主が葬儀のスピーチをしている画像
喪主挨拶の例文
故人:兄弟(姉妹) | 性格:物静か | 趣味:芸術

本日はお忙しい中、兄○○の葬儀にご参列いただき、誠にありがとうございます。
私は妹の○○でございます。
遺族、親戚を代表しまして、一言ごあいさつ申し上げます。

兄は生まれた時から身体が弱くて、入退院を繰り返していました。
ずっと母は兄のつきそいで病院にいて、事情がわかっていない私はとても寂しい思いをしました。

小学校の時にちょうど生意気になったころです。
私は母に反抗して「いつもお兄ちゃんばっかり、私も病気をして入院してみたいわ」と言ったことがあります。
すると母は顔色を変えて泣きながら「冗談でも、そんなことは言わないでちょうだい」と叫んで私を叩きました。
子供ながらに、これは言ってはいけないことだったのだと理解して、泣きながら謝りました。
あとで父から兄が入院中にこっそりと「生まれた時に二十歳になるまで生きられるかどうかわからないと宣告されていた」と教えられました。
何も言わない兄に意地悪をしていた自分が恥ずかしくなりました。

それまで入院している兄の見舞いなど行ったこともなかったのですが、兄が好きだったお菓子を買って行ったことがあります。
機械に囲まれて点滴されてぐったりしている兄を初めて見ました。
とてもショックでした。
心を入れ替えて優しくしようと決めました。
なかなかうまくいきませんでしたが。

兄はとても絵を描くのが上手で、病院での展覧会や、たまにしか行かない学校からもコンクールに出してもらえて賞をとったりしてました。
たまたま中学校の時に「校内漫画コンクール」というものがあって、兄はそれまで読んでいた漫画の主人公たちを描きました。
とても中学生と思えないようなできばえで、私は尊敬しました。
兄はそれから漫画に興味を持ったらしく雑誌の似顔絵コーナへなどにも投稿して掲載されていました。

私が高校に入った時です。
同人誌を作っているという友達ができました。
〇〇さんです。
私は兄の話をして、兄の描いた絵を見せました。
すると「ぜひ仲間に入って欲しい」と鼻息荒く勧誘されました。
身体が弱くて高校も通信制の学校に行っているので、活動は無理だと思うと1度は断ったのですが、彼女は諦めません。
家まで押しかけてきて兄に会って直談判を始めました。

兄は最初は興味がなく「自分は長くは生きられない人間なので、こうやってたまに載せてもらうだけで満足だから」と断ったのですが「あなたの作品を、あなたが生きた証を本にして、みんなに読んでもらおうとは思わないのですか!」という、彼女の言葉が兄に突き刺さったようです。
彼女は後から言い方が酷かったと謝っていましたが、兄は「そのくらいじゃなきゃ、動けなかった」と笑っていました。
なぜか絵心のない私も、兄のマネージャーにと半ば強制的に入れられました。
彼女は「まず手始めに、7月までに5枚絵を描いてください」と兄に依頼してきました。
なぜ7月なのかと聞くと「もちろんコミケに出す本に載せるためです」と、当たり前のように答えました。

コミケとは、コミックマーケットと言いまして、日本中の同人誌を作っているアマチュアやプロの人たちのお祭りで、自分たちが作った本を売っているイベントです。
私達はテレビや雑誌で聞くくらいの大きななイベントでしたので、兄は最初怖じ気づいて断りましたが、コミケの分厚い本を持ってきて「こんなにたくさんの人たちが出しているのだから大丈夫。怖くないよ」と言いました。
兄は仕方なく、描いている時はとても生き生きとしてましたが描きましたら、彼女はとても興奮して「カラーでもう1枚!」と言い出しました。

しばらくして「これが売る本です、献本です」と一冊の本を渡してきました。
実は彼女は今はプロになっていますが、当時はアマチュアの中でも人気があったそうで、とても本格的な印刷の本でした。
兄は何度もその本を読み、何度も自分の絵が印刷されたところを読んでいました。
本はとても売行きが好調だったらしく、兄の絵で作ったグッズも欲しいという方がたくさんおられたそうで、彼女は「私の目に狂いはなかった」と高笑いしてました。

それからも兄は同人活動続け、個人サークルと独立して人気となり、出版社からも声をかけていただくようになったのですが、身体のことを理由にお断りしていました。
しかし〇〇社さんだけは「うちはネット展開している会社だから、体調の良い時に描いてくれたらいいよ」と一歩も引きません。
兄は〇〇さんといい、押しの強い人になれていなかったのもあり、陥落されてしまいました。
おかげさまで、全国の方々にも兄の作品を見ていただくことができて、兄の名前も知られることとなり、出版までしていただくことができました。

〇月〇日、朝起こしに行ったところ、机に突っ伏している兄の姿を見た時に、私はショックで気絶してしまいました。
両親は私までどうかしたかとうろたえたそうです。
兄はとても満足そうな顔をしていました。

誰にも知られることもなかった人生だったであろう兄に、生きた証をと説得してくださった〇〇さん、断っても辛抱強く誘ってくださった〇〇社の方達には感謝の言葉もありません。
タイムリミットの二十歳をとおに過ぎて、生甲斐と命をくださって、本当にありがとうございました。
簡単ではありましたが、皆様への感謝の気持ちも込めて、ご挨拶とさせていただきます。
本日は誠にありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です